■危険な階段事件
事件受任に至るまで
本件では様々な瑕疵が争点となりましたが、中でも階段の寸法に関する瑕疵が酷く、訴訟中に居住者が何度も転落して、骨折するなどの大怪我を負いました。階段の寸法は、建築基準法施行令において、幅、蹴上げ(段板の高さ)、踏面(段板の奥行き長さ)がそれぞれ定められています。戸建住宅の階段は、幅が75㎝以上、踏面が15㎝以上と定められています。ところが本件階段は、段板を刺し通す形で2本の力桁(チカラゲタ)があり、力桁間の幅が50㎝しかなく、力桁の箇所は踏面が6㎝しかないため、上記施行令に違反しており、少しでも足を踏み外すと力桁の上に足を乗せてしまい、滑り落ちてしまうのです。
本件は他にもたくさんの瑕疵があり、難しい事案でもあったため、当初、依頼者が私以外の弁護士の法律相談を受けた際、私を紹介されたとのことです。その弁護士は別件で、私が欠陥住宅の被害者側の代理人を担当したときに、相手方の業者側の代理人を担当された方で、有り難いことにそのご縁でご紹介いただきました。
私が相談を受けたときは、すでに住宅紛争審査会の調停申立を行い、その調停が不成立で終了したので、訴訟を提起する以外に選択肢はありませんでした。
訴訟の流れ
訴訟における業者の主張は驚くべきものでした。仮に段板の寸法が建築基準法施行令に違反していたとしても、段板は目に見えるものであるから、それを踏み外すのは居住者の不注意であり、業者に責任はないと言うのです。
しかし、自宅の階段は毎日利用するものですから、それが違法で危険な階段であれば、転落事故を完全に防ぐのは困難です。また、現場を確認して気付いたのですが、転落事故は全て階段を下りるときに半分を過ぎたあたりで発生しており、そのあたりには2階の壁があり、階段を下りるときには迫り来るように視界に入ってくるため、おそらく自然と視線が上方に奪われ、そのときに足を踏み外してしまうのだと思いました。
業者は自己の権利を守るために反論することはできますが、自身の法令違反を棚に上げて居住者の責任に転嫁する主張は非常に筋が悪いと思いますし、このような訴訟対応を行う業者が、建築業界では依然として多いことに暗澹たる気持ちになります。
裁判所は、一級建築士の専門委員を選任し、専門的知見を踏まえた上で判決を下しました。当然ながら、判決では階段の瑕疵が認定され、損害としては、階段の是正工事費用の他に、居住者が怪我をしたことで、治療費、通院交通費、通院慰謝料なども認められました。
裁判所が地方の支部で建築訴訟に不慣れだったこともあり、争点整理には時間がかかりました。また、訴訟中に家族が何度も怪我をしたことで、訴えの変更や追加の訴えなども必要になり、訴訟提起から判決まで約3年3か月かかりました。
コメント
建築基準法は、建築物の最低の基準を定めています(建築基準法第1条)。ですから、建築基準法に違反することは非常に危険な瑕疵であり、そのことを改めて認識することができました。
一日も早く、建築業界全体が法令を遵守する健全な業界になることを願ってやみません。