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弁護士紹介

高木 秀治


建築コラム

建築トラブルに役立つ基礎知識

このコラムでは、これまでに法律相談で受けたいろいろな質問の中から、代表的な質問について解説していきます。

建築トラブルに役立つ基礎知識5

水濡れの原因は、雨漏り?配管?結露?
水濡れの原因の特定は難しい

水濡れは、専門家が関与しても原因を特定するのは難しいです。その理由は、ほんのわずかな隙間からでも漏水するので、そのわずかな隙間を見つけるのが難しいこと、漏水の原因が複数存在する場合があることなどが挙げられます。このように原因の特定が難しいため、建築会社は、水濡れの原因は過度な湿気による結露水だと主張して、居住者側に責任転嫁することが多いです。

では、一般的にどのような方法で原因を特定していくのか、重要なポイントを解説していきます。

水濡れのタイミングと場所を正確に把握しましょう

水濡れの原因の特定は、可能性を全て潰していくという至極シンプルな方法で行います。ただし、これを効率的に行うには、ある程度の目星を付けておく必要があります。そして、専門家が現地を確認したとしても、都合良く水濡れ現象が生じていることは希ですので、基本的には居住者からの情報によってこの目星を付ける必要があります。そのため、専門家に相談するときは、事前に重要な情報を整理しておく必要があります。

重要な情報とは、水濡れのタイミングと場所です。

まず、水濡れのタイミングです。雨が降ったときに水濡れ現象が発生する場合は雨漏り、特定の設備を使用したときに水濡れ現象が発生する場合はその設備や配管、これは分かりやすいですね。他には、雨天でも強風時や特定方向の風が吹くときに限り水濡れ現象が発生したり、夜のうちにお湯を沸かすタイプの給湯器からの漏水で、深夜に限り水濡れ現象が発生するというように、タイミングが限定的なケースもありますので、正確にタイミングを把握することが重要です。

次に、水濡れの場所です。木造の在来工法で、防水紙と胴縁通気工法による一般的な建物の雨漏りの場合、雨水が浸入する場所と水濡れ現象が発生する場所は比較的近いことが多いです。設備や配管からの漏水も、その直下で水濡れ現象が発生することが多いです。ですが、鉄筋コンクリート造の場合、コンクリートひび割れの毛細管現象により雨水が壁内を移動したり、木造枠組壁工法で特殊な防水材を使用している場合、雨水が横走りしたりするなど、雨水が浸入する場所と水濡れ現象が発生する場所が離れているケースもよくあります。水濡れ現象が発生する場所が、壁なのか、天井なのか、サッシ周りなのか、床下なのか、複数ある場合にはどちらが先に現象が発生するのかなど、正確に把握することが重要です。

雨漏り調査の方法

雨漏り調査の方法にはいくつかあるので、その概要を説明します。

よく利用されるのは散水調査です。雨水の浸入が疑われる箇所に、実際に水をかけて、雨漏りの現象を再現します。下の階から上の階に順番に水をかけていきます。予め散水する箇所や時間を計画して実施します。平らな屋上やベランダなどでは、水張り試験を行って雨漏りの現象を再現することもあります。

コンクリートのひび割れの毛細管現象などのように雨水が浸入する場所と水濡れ現象が発生する場所が離れていたりして、雨水の浸入経路が不明な場合、ガスや有色水を流して浸入経路を把握する方法があります。水濡れ部分の方が、乾いている部分よりも温度が下がりやすいことから、赤外線カメラを使用して、温度が低くなっている部分を探して雨水の浸入経路を把握する方法もあります。

また、破壊調査を行って、防水工事の施工状況や水濡れ跡を直接確認する方法もあります。

これらの調査方法により、場合によっては複数の調査方法を併用して、雨漏りの原因を特定していきます。

「雨漏り」と「配管からの漏水」の違い

建築トラブルでは、同じ漏水被害でも大きく分けて「雨漏り」と「配管からの漏水」があります。この2つは、被害現象が似ていますが、大きな違いがあります。

それは権利行使できる期間です。

雨漏りの場合、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」により、建物引渡しから10年間は権利行使が可能で、この期間を特約で短く設定しても無効となります。

これに対し、配管からの漏水は、雨漏りのような保護規定がないので、他の不具合と同じ扱いとなります。新民法によれば、権利行使できることを知ったときから5年間、建物引渡しから10年間ですが、通常、契約や約款等によりさらに短く設定されており、この特約は原則有効と解されます。

結露とは

空気中に含むことができる水蒸気の量を飽和水蒸気量といいます。空気が温かければ飽和水蒸気量が増え、冷たければ減ります。夏場、たくさんの水蒸気を含んだ温かい空気が、冷たい水が入ったグラスに触れることで、この部分の空気が冷やされて飽和水蒸気量が減り、水蒸気の形態を維持できずにグラスの表面に水滴が付く、これが「結露」です。

「漏水」被害の事案において、業者から「結露」であると反論されることがあります。居住者の生活環境で発生した水蒸気が結露したことで濡れただけであり、施工不良によるものではないとの主張です。この場合、水の供給源を明らかにする必要があります。また、「結露」の場合でも、例えば設計図書の仕様とは異なる断熱工事が行われた等の施工不良に起因することもあり、この場合には工事の責任を免れることはできません。

結露を防ぐには、「断熱」、「気密」、「換気」が重要です。サッシの結露対策として、断熱性能が高いペアガラス(複層ガラス)やインナーサッシ(二重サッシ)を勧められることがあります。しかし、これでサッシが結露しなくなったとしても、建物内の水蒸気量に変化がなければ、他の冷たい箇所、例えば押入の中などで結露が発生します。この場合に重要なのは「換気」です。

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