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高木 秀治


建築コラム

建築トラブルに役立つ基礎知識

このコラムでは、これまでに法律相談で受けたいろいろな質問の中から、代表的な質問について解説していきます。

建築トラブルに役立つ基礎知識11

欠陥住宅の裁判は何故勝てないのか?
事件の専門性

欠陥住宅の被害者は、欠陥を証拠によって証明できれば勝ちます。では欠陥の証拠とは何でしょうか?それは「欠陥住宅」そのものです。

しかし、欠陥住宅の裁判では被害者側が勝つのが難しいという話を耳にします。なぜ証拠がある被害者側が勝てないのでしょうか。

理由の1つは立証責任が関係しています。立証責任とは、権利を主張する者が、その権利を裏付ける事実を証拠によって証明する責任で、証明できれば勝ち、できなければ負けます。「証明できた」と言うためには、裁判官に事案を理解してもらう必要があります。裁判官が「分からない」となると証明できたことにはなりません。

ところが欠陥住宅の裁判は、医療事故の裁判と同じくらい専門性が高いと言われています。専門技術的な争点は、事案を理解すること自体が難しいので、その分だけ立証責任を果たす難度が高くなり、被害者側が勝つのが難しいのです。

この点、医療事故の裁判では、立証責任が医療側に事実上転換されることが裁判上認められているので、当事者間の不均衡がある程度是正されています。

ところが、欠陥住宅の裁判では、一般的に立証責任の転換が認められていないので、当事者間の不均衡が残ったままです。

裁判所としては、専門委員や調停委員などの専門家を裁判手続に関与させる方法により、裁判官が事案を適切に理解して公正な判断を下すよう努めています。

しかし、専門家が関与しただけで、技術的な内容を裁判官が瞬時に理解できるわけではありません。多くのケースでは、専門家が争点に対する判断をしています。これを裁判官が適切にコントロールできない場合、裁判官ではなく専門家が裁判をしているような状況になります。この専門家とは、建設業界で働いてきた方ですから、目線や立ち位置は業者側です。そのため、公正さに疑念を抱く判断がされるなど、司法制度が上手く機能していないと思うこともあります。

また、欠陥住宅の被害者が立証責任を果たすには、弁護士の力だけでは足りず、建築士や地盤品質判定士などの専門家の協力が不可欠です。そのため立証自体の負担が大きいという問題もあります。

欠陥は目に見えない

欠陥住宅の特徴として、重大な欠陥ほど目視では確認できないことが多いです。例えば構造の欠陥では、建物の骨組みとなる躯体部分に問題があるので、通常は仕上部分に隠れて見えません。構造計算をしてみなければ問題が分からないこともあります。地盤の欠陥では、専用の機械を使った地盤調査などが必要になります。

欠陥住宅という証拠は存在していますが、欠陥を見える形に証拠化するのが大変なのです。

勝訴の秘訣は失敗しないこと

いろいろと悲観的なことを述べましたが、被害者が欠陥住宅の裁判に勝てないのかというと、決してそんなことはありません。ハードルは多いですが、このハードルを全て乗り越えることができれば、裁判官は欠陥を認定してくれます。失敗しないことが勝訴の秘訣です。そのためには我々弁護士も専門性を高める必要があるということですね。

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