プラス法律事務所 HOME > 弁護士紹介 > 高木 秀治 > 【建築コラム】「建築トラブルに役立つ基礎知識」住宅トラブルの権利の期間制限、消滅時効とは?除斥期間とは?

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高木 秀治


建築コラム

建築トラブルに役立つ基礎知識

このコラムでは、これまでに法律相談で受けたいろいろな質問の中から、代表的な質問について解説していきます。

建築トラブルに役立つ基礎知識13

住宅トラブルの権利の期間制限、消滅時効とは?除斥期間とは?
権利の期間制限の種類

請求権には必ず期間制限があります。この期間制限を経過してしまうと、原則、被害救済ができなくなります。とてもこわい話ですが、この権利の期間制限について説明しようとしても、民法の他にも特別法があり、旧民法から新民法で大きく内容が変更されるなど非常に複雑ですので、一般の方が直ちに理解するのは難しいと思います。建築相談を受ける建築士も、権利の期間制限に関する法知識は持ち合わせていません。これからその一部をかいつまんで説明しますが、建築トラブルに遭われた方は、新築で間がないケースでない限り、一度は専門の弁護士に相談されることをお勧めします。

建築トラブルで被害者が業者の責任を追及する場合、大きく分けて契約不適合責任か不法行為責任が考えられます。前者は契約責任、後者は契約関係がなくても生ずる責任です。通常、契約責任の方が責任追及しやすいので、まずは契約責任を考えますが、時効などで契約責任を追及できない場合、より広い範囲をカバーする不法行為責任を検討します。

権利の期間制限には、消滅時効と除斥期間の2種類があります。

消滅時効とは、時効期間経過後、債務者が消滅時効を援用することで、債権者の請求権が消滅します。そのため、債権者は時効期間経過前に訴訟等の請求をする必要があります。ただし、時効期間経過後であっても、債務者の消滅時効の援用が信義則違反や権利濫用であると債権者が主張できる余地があります。

除斥期間とは、除斥期間経過後、債権者の権利が消滅します。そのため、債権者は除斥期間経過前に請求する必要があり、裁判外の権利行使も認められる場合があります。これまでの除斥期間の解釈は、債務者の援用を要せず、除斥期間経過後の信義則違反や権利濫用という債権者の主張は認められないと解されていましたが、2024年の旧優生保護法の最高裁判例では、民法第724条後段の除斥期間は債務者の援用が必要であり、これが信義則違反や権利濫用となる場合があることを判示しました。

契約不適合責任の消滅時効とは?

2020年4月1日に施行された新民法によれば、これ以降に締結された契約は、権利を行使することができる時から10年間で一般債権の消滅時効が完成します。さらに、権利を行使することができることを知った時から5年間でも消滅時効が完成します。つまり、建物引渡しから10年以内、契約不適合を知った時から5年以内に訴訟等を提起する必要があります。

時効期間は、契約によって民法よりも短く設定される場合があります。

しかし、住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)という特別法により、新築住宅の構造耐力上主要な部分の瑕疵(構造上の欠陥)と雨水の浸入を防止する部分の瑕疵(雨漏り)の場合は、引渡しから10年間は契約不適合責任を負うことになり、この期間を短くする特約は無効となります。

契約不適合責任の除斥期間とは

2020年4月1日に施行された新民法によれば、これ以降に締結された契約は、契約不適合を知った時から1年以内にその旨を相手方に通知しなければ、原則、この責任追及ができません。この期間は除斥期間と解されていますので、裁判外での通知が可能で、損害額まで通知する必要はなく、契約不適合を通知するだけで足りるとされています。

不法行為責任の権利の期間制限

2020年4月1日に施行された新民法によれば、損害及び加害者を知った時から3年間(人の生命又は身体を害する不法行為の場合は5年間)、不法行為の時から20年間、それぞれ消滅時効が完成します。

20年間の消滅時効は、旧民法では除斥期間と解されていましたが、新民法では消滅時効と規定されました。

建物の引渡しから20年間は責任追及できる可能性があり、契約責任よりも期間が長いので、時効などで契約責任を追及できない場合は不法行為責任を検討します。

表面的な調査、修繕しかしない業者にはご注意ください

欠陥住宅の特徴として、重大な欠陥ほど目視では確認できない建物内部に問題があることが多いです。そのため、重大な欠陥を特定するには、破壊調査等の大がかりな調査が必要となることが多く、これには相応の調査費用がかかります。そのため、誠実ではない業者の場合、重大な欠陥の可能性を知りつつも、表面的な仕上の補修などを繰り返し、根本問題には手を付けないようにします。このようなやり取りをしているうちに、10年間の消滅時効の期間が経過すれば、業者は対応しなくなり、被害者が訴訟を提起しても消滅時効を援用されてしまいます。

過去に取り扱った事件では、建物引渡後すぐに雨漏りが発覚しましたが、業者は雨漏りの原因をしっかり調査せず、表面的な補修だけを繰り返して、10年経過する直前に私が相談を受けたため、直ちに破壊調査を行って雨漏りの原因を特定し、ぎりぎり消滅時効の期間内に訴訟提起して解決に至ったことがありました。

表面的な調査、修繕しかしない業者は、消滅時効の完成を狙っている可能性がありますので注意が必要です。

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