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弁護士紹介

高木 秀治


建築コラム

建築トラブルに役立つ基礎知識

このコラムでは、これまでに法律相談で受けたいろいろな質問の中から、代表的な質問について解説していきます。

建築トラブルに役立つ基礎知識1

建築裁判と建築ADR
建築ADRとは

「ADR」とは、「Alternative Dispute Resolution」の頭文字で、日本語で「裁判外紛争解決手続」といいます。文字通り裁判以外の紛争解決の手続で、主に話し合いによる解決を目指します。裁判所では民事調停、弁護士会では和解あっせん、調停、仲裁などがあります。その他にも様々な行政機関や民間機関が、トラブルを解決するためのADRを運用しています。

したがって、建築トラブルを解決するための手続は、大きく分けて、建築裁判と建築ADRの2種類があるといえます。

建築に特化したADRといえば、弁護士会の住宅紛争審査会や、国土交通省や各都道府県の建設工事紛争審査会などが有名です。弁護士会の住宅紛争審査会は、申立手数料が1万円で、専門家が関与して、簡易、迅速、非公開など様々なメリットがありますが、利用者は性能評価住宅や保険付き住宅の取得者などに限定されます。

国土交通省や各都道府県の建設工事紛争審査会は、請負契約に関するトラブルに限定されます(売買契約や設計契約(準委任契約)に関するトラブルなどは除外されます)。とくに元請と下請間のトラブルなど、請負業者間のトラブルの解決に適しています。

建築裁判と建築ADR、どっちがいいの?

ケースバイケースではありますが、それぞれの特徴から、ある程度の傾向について説明することは可能です。

まず、裁判がADRと大きく異なる点としては、判決という強制力があることです。ADRは主に話し合いによる解決を目指すと説明しましたが、相手方が話し合いに応じない場合や、話にならない場合は、解決不能となります。これに対し、裁判は、相手方が話し合いに応じない場合や、話にならない場合でも、最終的には判決が下されて、これに基づいて強制執行することができますので、解決は可能です。

一方、ADRのメリットとしては、裁判よりも簡易、迅速であり、費用も比較的安いといえますので、ADRで解決できる事案は、できるだけADRを選択した方がよいという判断になります。ADRで解決できる事案とは、相手方が話し合いに応じる可能性が高い事案です。裏を返せば、重大な欠陥があり、補修費用が非常に高額になるなど、相手方が話し合いに応じる可能性が低いと考えられる場合は、裁判を選択せざるを得ないという判断になります。

建築裁判でも話し合いによる解決の手続はある

誤解されやすい点として、建築裁判を選択した場合、必ず判決が下されると考える方が多い印象ですが、裁判でも話し合いによる解決の手続はあります。

例えば、裁判において、原告と被告の双方が主張立証を行い、ある程度の争点整理が進み、裁判所が心証を形成した段階で、多くの場合、和解の試みが行われます。和解とは、お互いが譲歩して解決に向けて合意する手続のことをいいます。裁判上の和解の場合、和解調書が作成されて、これは判決と同じの効力を有するので、強制執行が可能となります。割合としては、判決よりも和解で解決することの方が多いです。

また、東京地裁の建築専門部に事件が係属した場合、原則として、調停に付されます。つまり、裁判をしているにもかかわらず、裁判外紛争解決手続(ADR)に付されるということです。これを付調停といいます。これには理由がありまして、調停に付すことにより、一級建築士などの専門家が調停委員として関与できるので、裁判所としては、建築に関する専門的知見を得た上で、事件を解決に導くことができるようになります。そして、調停の段階で、話し合いによる解決ができれば調停成立となり、調停調書が作成されます。これも判決と同じの効力を有するので、強制執行が可能となります。

このように、建築裁判でも話し合いによる解決の手続がありますので、柔軟な解決を目指すことは可能です。

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