■構造的に安全?危険?
躯体の問題か
建物の部材にひび割れ、傾き、膨れなどの不具合が多数確認される場合、構造的に危険ではないかと心配されることが多く、尤もなことかと思います。構造的に危険かどうかは技術者が判断する必要があり、弁護士には分かりません。ですが、技術者が判断するために確認すべき情報はありますので、その点について説明したいと思います。
建物の構造上の安全性は、建物に作用する様々な荷重に対して、建物が必要な構造耐力を有しているかにより判断されます。様々な荷重とは、垂直方向の荷重(建物の自重、積載荷重、積雪荷重等)や、水平方向の荷重(地震力、風圧力等)です。これらの荷重を支えるのは、建物の骨組み部分です。建築用語でいえば「躯体」、法律用語でいえば「構造耐力上主要な部分」です。
問題となっている不具合が、躯体部分にあるのか、それ以外の部分にあるのか、確認することがまずは重要です。
建物の構造の把握が必要です
建物の躯体部分がどこかに当たるかは、建物の構造によって異なりますので、不具合が建物の躯体部分にあるかどうかを知るには、まずは建物の構造が何かを把握する必要があります。木造であれば、軸組工法(在来工法)、枠組壁工法(ツーバイフォー等)、鉄骨造であれば、ブレース構造、ラーメン構造、鉄筋コンクリート造であれば、ラーメン構造、壁式構造などです。この情報がなければ技術者は判断が困難ですので、最低限の情報として把握しておきましょう。
参考となる資料は仕様書、構造図、構造計算書
技術者が建物の構造を把握するには設計図書が必要です。設計図書とは、仕様書と設計図をいいます。この設計図書には、意匠図、設備図、構造図などいくつか種類があり、中でも構造に関する設計図書が重要です。具体的には、特記仕様書、標準仕様書、軸組図、伏図(基礎伏図、床伏図、梁伏図、小屋伏図等)、各部材リスト、矩計図、断面詳細図、構造計算書などが参考になります。