■基礎コンクリート掘削粉じん事件
事件受任に至るまで
相談者は、自宅のリフォーム工事について、建築士に設計・工事監理を依頼し、施工会社に工事を依頼していたところ、施工会社が発注したユニットバスのサイズが大きすぎて基礎に納まらず、あろうことか基礎コンクリートを掘削してしまったという事案です。
室内でコンクリートを掘削した場合、非常に細かい粉じんが大量に舞い上がり、室内のいたるところに飛散しますので、その影響で、相談者の家族は、鼻づまり、眼の痛み、喉の違和感、頭痛、息苦しさ、胸苦しさなどを訴えるようになり、室内でもマスクが手放せなくなり、病院の医師には「アレルギー性気管支炎」と診断されました。
このような酷い工事が行われたため、相談者は工事監理料と請負代金の支払いを一部拒否していたところ、設計者及び施工者からこれら費用の支払いを求める訴訟を提起されてしまい、私は、訴訟提起を受けた後に、相談者の事件を受任しました。
訴訟の流れ
本工事には基礎の掘削の他に様々な瑕疵があり、当方から設計者及び施工会社に対して損害賠償請求の反訴を提起しました。ところが、相手方が基礎を掘削した事実を否認したため、「基礎を掘削したか否か」が最大の争点となりました。
基礎を掘削した箇所はユニットバスの下にあり、工事後は見えなくなるため、ユニットバスを壊すことなく、どのようにして基礎を掘削した事実を立証するかがとても悩ましい事案でした。最終的には、キッチンの床に点検口を新たに設けて、そこから床下に侵入し、床暖房の下をかいくぐって浴室まで移動し、ようやくユニットバスの下に辿り着くことに成功しました。私もつなぎを着て潜りました。
裁判所が現地調査に訪れたときは、工業用内視鏡カメラを用いて、ノートパソコンの画面から、裁判官がリアルタイムで掘削状況を確認できるようにするなど工夫したことにより、基礎を掘削した事実を証明することに成功しました。
当方の立証が成功したため、裁判所から、当方に有利な調停案が提示されて、無事、調停成立に至りました。
相手方の訴訟提起から調停成立までの期間は約2年2か月でした。
コメント
建築訴訟には困難な課題がいくつもありますが、その1つが瑕疵の立証です。普段は見えないところの瑕疵を、できる限り建物が傷付くことのないよう配慮しながら調査し、必要十分な証拠を確保することに、いつも頭を悩ませています。