■工事途中で建築トラブル、工事を中止すべき?
完成・引渡しが遅れたことによる遅延損害金が支払われるとは限らない
工事途中で建築トラブルが発生した場合、工事を中止すべきでしょうか。施主が仮住まいをしているときに、問題は一気に複雑になります。工事を中断すれば、完成・引渡しの時期は遅れてしまいます。このとき、施主が仮住まいをしていれば、毎月の仮住まい費用が損害として膨れ上がっていきます。すぐに工事を再開できればよいですが、長期にわたって中断した場合、施主の損害は深刻なものとなります。そして、完成・引渡しの段階で、施主が、完成・引渡しが遅れたことによる遅延損害金を請求したとしても、建築会社が、施主の指示で工事を中止したので、建築会社に責任はないと主張するなどして、遅延損害金が支払われない場合があります。
そのため、工事を中止すべきかどうかの判断は慎重に行う必要があります。
請負代金を支払って引渡しを受けるか、同時履行を主張して支払いを拒絶するか、専門家に相談しましょう
「建築トラブルに役立つ基礎知識3 欠陥がある場合、引渡しを拒絶した方がいい?」で説明したように、施主は、建築会社が欠陥を修繕するまで、あるいは、損害賠償するまで、請負代金の支払いを拒絶することができます(同時履行の抗弁)。これに対し、建築会社は、請負代金の支払いがなければ、建物は引き渡さないと主張することができます(同時履行の抗弁)。このとき、施主が仮住まいをしていると、毎月の仮住まい費用が損害として膨れ上がっていきます。そして、完成・引渡しが遅れたことによる遅延損害金が支払われるとは限らないとなると、施主が仮住まい費用を負担するおそれというリスクが発生します。
ここで施主には2つの選択肢があります。
1つは、同時履行の抗弁をあきらめて、請負代金を支払い、建物の引渡しを受けます。引渡しを受けた後、建物調査を行い、欠陥を特定し、修補請求や損害賠償請求を行います。一旦支払ったお金を回収するという流れになりますので、その間に建築会社が倒産などで無資力となった場合、回収できなくなるリスクが発生します。ですが、施主は、仮住まい費用を負担するリスクを未然に防ぐことができます。
もう1つは、建築会社が欠陥を修繕するまで、あるいは、損害賠償するまで、請負代金の支払いを拒絶します。この場合、建物の引渡しは受けられなくなる可能性が高く、仮住まい費用を負担するリスクを未然に防ぐことができず、毎月の損害として膨れ上がっていきます。ですが、請負代金請求権と損害賠償請求権を最終的に相殺処理できます(回収不能のリスクを回避できます)。
仮住まい費用を負担するリスクは軽視できるものではないので、後者を検討する場合には、遅延損害金を請求できる事案なのか、見通しを判断できる弁護士に相談して、慎重に決断することをお勧めします。