プラス法律事務所 HOME > 弁護士紹介 > 高木 秀治 > 【建築紛争の事例解説】崖崩れの責任の所在は?事件

弁護士紹介

高木 秀治


事例の目次

建築紛争の事例解説5

崖崩れの責任の所在は?事件
事件受任に至るまで

本件は崖崩れの事案です。事案内容は少し複雑です。第三者が所有していた畦畔(いわゆる「あぜ」という斜面部分)が大雨によって崩れ、畦畔及び上地の土砂が下地の住宅地まで流れ込みました。幸いなことに下地には流土止めが設置されていたので、土砂は住宅の直前で止まりました。

しかし、大量の土砂を処理する問題と、さらなる崖崩れを防止しなければならない問題が残りました。

土砂を処理する問題は、下地が新たに宅地造成された土地であったため、下地の住民の請求により、当該宅地造成を行った開発業者が土砂を撤去することになりました。

ところが、この開発業者は、何故か上地の所有者に土砂の撤去費用の支払いを求める訴訟を提起したのです。

訴えられた上地の所有者は、いわば被害者です。これに対して、後で判明することですが、本件崖崩れの原因は開発業者の開発行為(畦畔部分の切土及び樹木の伐採)によるものであるとの地盤の専門家の見解があり、この見解を前提とすれば、開発業者は加害者となります。つまり、本件は加害者が被害者を訴えた訴訟ということになります。

畦畔部分のさらなる崖崩れを防止しなければならない問題は、本来であれば畦畔を所有する第三者が崖崩れを防止する措置を講じるべきですが、当該第三者が全く動かなかったので、やむなく上地の所有者が、自費を投じて新たに擁壁を設置して、当該擁壁の設置費用を開発業者に求める旨の反訴を提起しました。

当初、上地の所有者には私以外の代理人弁護士が付いていましたが、依頼者曰く建築紛争に不慣れだったようで、ほとんど主張立証活動を行わず、上地の所有者本人が訴訟資料の大半を自ら作成していました。

私は、この訴訟に関わった地盤の専門家の紹介により、上地の所有者の依頼を受けて、前の代理人弁護士と交代する形で、本件訴訟を受任することになりました。

しかし、私が受任したときは、開発業者の訴訟提起から約2年6か月が経過し、裁判は調停に付され(付調停)、上地の所有者と開発業者が土砂の撤去費用を折半する旨の裁判所の調停案がすでに提示されていたという事件終盤の段階でした。

訴訟の流れ

私はこれまでの当事者間の主張を全て整理し直して、そもそも本訴訟は加害者が被害者を訴訟提起するという不当訴訟であると主張して、崖崩れの発生機序について具体的かつ網羅的に主張した準備書面を提出しました。

すると、裁判所は、異例にも一旦提示した調停案を撤回して、最終的には、開発業者が上地の所有者に対して解決金を支払う旨の調停が成立しました。

開発業者の訴訟提起から調停成立までの期間は約3年1か月、その内、私が関与してからは約7か月でした。

コメント

前の代理人弁護士の主張立証が十分でないとして、建築紛争に強い弁護士を探して私のところに辿り着く依頼者がいます。このような依頼者のほとんどは、最初、弁護士であればどのような事案でも対応できると思って依頼したところ、どうやらそうではないことが裁判途中で分かり、この段階でようやく弁護士の専門性を調べるようになったと言います。

途中からの引き継ぎ案件は、すでに戦局が不利に傾いていることが多く、そのような状況から挽回することは、建築紛争の経験豊富な弁護士でも容易なことではありません。また、途中で弁護士を交代する場合、弁護士費用や主張立証の時間がその分余計に多くかかります。

建築紛争などの専門性の高い訴訟を弁護士に依頼するときは、事前に弁護士の取扱分野を確認されることをお勧めします。

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